知冬の暮らしの手帖

27歳の知冬(ともふゆ)が綴る日々のあれこれです。

本の感想:知里幸恵『アイヌ神謡集』

 

アイヌ神謡集 (岩波文庫)

アイヌ神謡集 (岩波文庫)

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1978/08/16
  • メディア: 文庫
 

 

 最近アイヌ文化への関心が高まっている北海道。もちろん、「ゴールデン・カムイ」のヒットや、来年北海道白老町に誕生する民族共生象徴空間「ウポポイ」などがそのある種「ブーム」を牽引しているらしいが、なんとなく、みんな急にそんなアイヌ文化に関心持ち始めてどうしたの?と冷静にツッコミを入れたくなるいち北海道民で私はある(道内の色々な施設やCMでファンタジックかつエキゾチックなイメージとしてアイヌ文化が挿入されている気がする)。

 

 でも、どんな文脈であれ、過去に埋没されかけた貴重な文化が広く再び日の目を見るのは良いことだなあと思います。でも、本格的にアイヌ文化について学んでみる勇気や気力もいささか欠ける僕にとって何か良い本は無いかなあと思っていたら、先日読んでいた『北海タイムス物語』にて、本書が登場していた。主人公がやつれた時に通うカフェのマスターが、ちょっと心動かされるエピソードと共に本書を紹介してくれるのだ。

 

 そんな文脈から発見した本書のせいか、かなり期待して読み始めてしまった。千里幸恵さんが命を削って書かれた本書。ページ構成は左ページがアイヌ語のローマ字表記で、右側が日本語訳となっていた。動物としての神の物語。その想像力はなんだか忘れかけた、ゼルダの伝説の世界のような、そんな印象を僕に与えた。正直、さっと読む本ではなく、時間をかけて身に染みてくる一冊なのだと思う。

 

 私たち現代人が忘れかけてしまった身近な神話が、ここには残されている。なかなか難しい言い回しやストーリーが頻出するため読みにくさは正直否めないけど、知里さんの序文を読むだけでも一読の価値はあると思う。